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TOBI STUDY | 東美スタディ ・ 今週のアートシーン

#23同じ襖絵が、青森とロンドンとシアトルにあった

2026年10月13日号 ・ 年数で読む7本 ・ 3分で読める
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上野の一室に、三つの国から集まった襖絵が並んでいる。見られるのは18日(日)までだ。16日には大阪で、35歳までにつくったものだけを持ち寄った建築家7人の展覧会が開く。17日は三つ重なる。渋谷に坂本龍一が1980年代に撮った写真、松山にテレビアニメ30年分の制作現場、初台に都市の隙間の生態系を扱う10人。来週は奈良で正倉院展、パリでアート・バーゼルが控えている。今週の7本。

江戸絵画🇯🇵 東京・上野(10/18閉幕)

ばらばらに売られた襖絵が、もとは一組だったと分かった

東京都美術館の「大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画」が10月18日(日)に閉じる。桃山時代の末から江戸時代初期に狩野派が手がけた襖絵は、大英博物館と、青森県中泊町の旧家・宮越家に分かれて所蔵されていた。近年の調査で、それが一連の作品だと判明する。本展では青森の襖絵に加えて、かつて大英博物館の襖絵と一組だったシアトル美術館所蔵の襖絵も特別出品され、約150年ぶりに一堂に並ぶ。大英博物館の日本コレクションは4万点あり、そこから江戸の屏風・掛軸・絵巻と、歌麿、写楽、北斎、広重ら8人の浮世絵師による版画100件以上が選ばれている。休室は月曜ときょう10月13日(火)で、開室は9時15分から17時30分まで(金曜は20時まで、入室は閉室の30分前まで)。観覧料は一般2,300円、大学生・専門学校生1,300円、65歳以上1,600円で、18歳以下は無料。10月31日(土)からは大阪中之島美術館へ移る。

💡 話せるタネ襖は、そもそも部屋を仕切る建具だ。建物から外されれば一枚ずつの絵として売られ、別々の持ち主のところへ行く。離ればなれになった絵が元は一組だったと分かるのは、調べ直した人がいたからにほかならない。
この記事の用語:襖絵(部屋を仕切る襖に描かれた絵。数枚で一続きの画面をつくるため、建物から外されるとばらばらの作品として扱われやすい)
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建築🇯🇵 大阪・梅田(10/16開幕)

35歳までにつくったものだけで、7人が並ぶ

大阪駅前のうめきたシップホールで、10月16日(金)から「Under 35 Architects exhibition 2026」が開く(〜10月26日(月))。出展できるのは1990年4月以降に生まれた人、つまり2026年3月31日の時点で35歳以下の建築家に限られる。全国から集まった候補を、ひと世代上の建築家・五十嵐淳が審査して7人を選んだ。甲斐貴大、グリアー・ハナ・ハヤカワ、佐藤熊弥、田代夢々、ボウアヤド・ガリ、保坂整、湯ノ迫史。会期中は11日間とも無休で、12時から20時まで開く(最終入場19時30分、最終日のみ16時30分最終入場・17時閉館)。入場料は1,000円。出展作のなかから優秀なものにGold Medal賞とToyo Ito Prize(伊東賞)が贈られる。

💡 話せるタネ建築の展覧会に、建物そのものは来ない。来るのは模型と図面と写真で、何をどう見せるかは設計した本人が決める。つくったものより、見せ方のほうに人柄が出ることもある。
この記事の用語:建築模型(建物を縮尺で立体にしたもの。図面では伝わらない光の入り方や奥行きを、手のひらの大きさで確かめられる)
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写真🇯🇵 東京・渋谷(10/17開幕)

世界を回っていた音楽家は、カメラも持っていた

1980年代、音楽家として世界を舞台に動きながら、坂本龍一は日々の風景や人々を撮っていた。その写真を紹介する写真展「PHOTO RYUICHI SAKAMOTO」が、10月17日(土)から渋谷・MIYASHITA PARK内のギャラリーSAIで始まる(〜11月8日(日))。公式サイトは中身をこう書く。特別な出来事ばかりではない、何気なく目にしたもの、旅先で見た風景、ふと差し込む光。サイトに出ている作例は3点で、いずれも手のひらに収まるサイズのプリントだ。2点はポラロイドで、1982年と撮影年不明。もう1点は1985年。キュレーションは後藤繁雄、協力は坂本龍一エステート、協賛はポラロイド。開館は11時から20時で、年中無休。

💡 話せるタネ曲をつくることと写真を撮ることは、やっていることが近い。どちらも目の前の時間から一部だけを切り出す。音楽家が何を撮ったかを見ると、その人が普段どこを見ていたかが分かる。自分のカメラロールも、同じ読み方ができる。
この記事の用語:スナップショット(構図を整える前に、目に入った瞬間をその場で撮る撮り方。あとから見ると、撮った人の視線の癖がいちばん出る)
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アニメ🇯🇵 愛媛・松山(10/17開幕)

絵柄は30年で変わる。描いた本人がそう言っている

「マンガもそうだけど、アニメも最初の頃と今とでは、キャラの絵がかなり変わってるので、その辺の移り変わりをみるのも楽しいかも」。原作者・青山剛昌が公式サイトに寄せたメッセージだ。「放送30周年記念TVアニメ『名探偵コナン』展」が10月17日(土)から松山の南海放送本町会館で開かれる(〜11月8日(日))。展示はTVアニメ30年分の制作の裏側を紐解く内容で、2026年2月の東京ドームシティを皮切りに鳥取、札幌、仙台、大阪、前橋、広島と回ってきた。松山のあとは横浜、名古屋、沼津と続き、海外も台北、バンコク、香港、ソウルと回っている。会期は23日間で、途中の休みはない。平日は11時から20時、土日祝は10時から19時(最終入場は閉場の1時間前)。当日券は一般2,200円、学生(小中高生)1,500円。前売の販売は10月16日(金)までで、当日券を含めてチケットはイープラスのみの扱いになる。会場の窓口では買えない。

💡 話せるタネ30年描けば、絵は変わる。変わった過程を隠さずに並べられるのは、途中を捨てずに残してきたからだ。昔の自分の絵が下手に見えるとしたら、それは上手くなった証拠でしかない。
この記事の用語:作画監督(アニメの各話で、原画や動画の絵柄をそろえる役。大勢で描いても同じキャラクターに見えるのは、この工程があるから)
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美術と環境🇯🇵 東京・初台(10/17開幕・前売はあすまで)

路傍の草を出発点にした展覧会に、建築家と服のデザイナーが入っている

東京オペラシティ アートギャラリーで10月17日(土)から「種と根っこ ─ 都市の耕し方」が始まる(〜12月20日(日))。路傍や空き地といった都市の隙間には、外来種や自律的な植生、コンクリートやプラスチックと共存する生物が入り込み、環境の変化に応じた新しい生態系ができている。そこを手がかりに、自然との関係を結びなおそうとする10人を紹介する展覧会だ。顔ぶれが広い。浅野友理子、今村文、岩名泰岳、加藤美佳、鈴木初音といった描く人たちに、建築家の板坂留五、ファッションレーベル「writtenafterwards」の山縣良和、羊毛をタフティングで平面にする䑓原蓉子、やきものや吹きガラスの中空を使って造形する西條茜、保良雄が加わる。開館は11時から19時(入場は18時30分まで)。休館は月曜日(11月23日(月・祝)は開館)と11月24日(火)。入場料は一般1,800円、大・高生1,100円で、中学生以下は無料。公式オンラインの前売は一般1,600円、大・高生900円で、販売は10月16日(金)23時59分まで。

💡 話せるタネ「自然」と聞いて山や森を思い浮かべているうちは、たぶん半分しか見ていない。アスファルトの割れ目から伸びる草も、ペットボトルの陰で暮らす虫も自然のうちだ。足元を見る練習は、どこにいても始められる。
この記事の用語:タフティング(下絵に沿って毛糸を布に打ち込み、面を埋めていく技法。もとは絨毯のつくり方で、いまは絵を描くように使う作家もいる)
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古代工芸🇯🇵 奈良(10/24開幕)

ペルシアの水差しを、奈良の漆の技でつくり直した人がいる

西方のペルシアに由来する水差しを、東アジアの漆工の技術で作った宝物がある。「漆胡瓶(しっこへい)」(北倉43)。主催者の見どころ解説が今年の注目に挙げた一点だ。第78回 正倉院展は10月24日(土)から11月9日(月)まで、奈良国立博物館で開かれる。会期中は無休だ。聖武天皇の遺愛品である「紅牙撥鏤碁子(こうげばちるのきし)」(北倉25)、造形の洗練された「白瑠璃瓶(はくるりのへい)」(中倉69)、西方起源の葡萄唐草文を精緻に鋳出した「鳥獣花背方鏡(ちょうじゅうかはいのほうきょう)」(南倉70)も並ぶ。正倉院宝物は全部で9000件にのぼり、宝庫を開けるのに天皇の許可を要する「勅封」の制度のもとで守られてきた。第1回展が開かれたのは昭和21年で、今年で80年になる。開館は午前8時から午後6時まで(金・土・日曜と祝日は午後8時まで、入館は閉館の60分前まで)。観覧料は一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円。観覧には原則、事前予約制の日時指定券がいる。

💡 話せるタネ1300年前の職人も、よそから来たかたちを自分の技術で作り直していた。真似ではない。手元の材料と技でどう成立させるかを考えた結果が、別のものとして残る。いま手癖で描いている線にも、同じことが起きている。
この記事の用語:勅封(宝庫の扉を開けるのに天皇の許可が必要だという決まり。誰でも開けられないという一点が、1300年分のものを残した)
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アートフェア🇫🇷 パリ(10/23〜25)

作品に値段がついた状態で、211軒がグラン・パレに集まる

211軒の画廊が、41の国と地域から集まる。アート・バーゼル・パリが10月23日(金)から25日(日)まで、パリのグラン・パレで開かれる。出展の数は会場であるグラン・パレの公式情報による。10月22日(木)の14時から20時にヴェルニサージュ(内覧)があり、一般公開はそのあとの3日間だ。開場は11時から19時まで。1日券は47ユーロだが、学生と26歳未満、ルーヴル美術館の会員証を持つ人は30ユーロになる。金曜(10月23日)の17時から19時だけ入れるイブニングチケットは40ユーロ。

💡 話せるタネ美術館では、作品の値段を聞く機会がない。フェアはその逆で、値段がついた状態の作品を見ることになる。誰がいくらで買うのかまで含めて、作品が社会に置かれる仕組みが見える場所だ。
この記事の用語:アートフェア(画廊が一か所に集まって作品を売る催し。美術館の展覧会と違い、並んでいる作品はその場で買える)
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今週はここまで。
30年、80年、1300年。今週は時間の単位がばらばらだった。コナンの絵柄が変わったのが30年、正倉院展が続いてきたのが80年、漆胡瓶が残ったのが1300年。いっぽうでU-35が区切るのは、35歳までという短い持ち時間だ。襖絵は約150年ぶりに一室へ戻り、坂本龍一の写真は1980年代のまま止まっている。長く残るものと、いま始まるものが同じ週に並ぶ。その中間にあるのが「種と根っこ」の作家たちが見ている変化で、都市の隙間の生態系は毎年少しずつ組み変わっている。どの時間の幅で見るかを選べることが、たぶんつくる側の自由のひとつだ。次号もお楽しみに。
編集:東洋美術学校 | study.to-bi.ac.jp ・ 全記事 出典リンク付きの要約です
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